今年もやってきましたROKKO SUN MUSIC!! 開場頃に降り出した雨も、開演前には見事晴天に。さすが、自然と共存するフェス。雨が降ろうが慣れっこなのだろう、楽しみどころも満載だけに、動じず思い思いに場所とりをする観客たちだが、今年は特にキッズが多い!? 親子そろって楽しめるのもこのフェスの醍醐味だったとあらためて認識しつつ───さあ、いよいよROKKO SUN MUSIC 2017がスタートです♪
今年のトップバッターは、ハイセンス・ボーダーバンド、ワンダフルボーイズ。SAXの響きも印象的なグルーヴィ―な『サウスポーミュージック』での幕開けに、自然とテンションも上がる。前へ前へとつめかけるオーディエンスも初っ端から手を上げノリノリだ。秀逸なメロディ・センス、軽妙なリリックに絶妙な抜け感が心地よい高揚感満点のポップ・ミュージック。楽曲が進むにつれ、ドラムやギター、ベースのソロ演奏もありと魅せどころも心得た遊び心たっぷりのパフォーマンスがなんとも心ニクイ。また、天才バンドとしても活動中のSundayカミデ(vo)の巧みなMCに終始笑顔がこぼれっぱなし。メンバーをいじり倒しながらも間延びしない話術は腹筋崩壊級の脱帽ものだ。そんなSundayカミデ曰く、「これを見たらちょっとイイことあるかも!?」 のアクロバットヨガポーズを観ることもできたからか(笑)、なんともハッピーなことが起こりそうな期待すら感じられる、恍惚感に満ち溢れる人続出だった。
続きましては、2015年以来、2回目の登場となるD.W.ニコルズ。1曲目に披露した、ROKKO SUN MUSICの雰囲気に、そして新緑の季節にぴったりのカントリー調サウンド『ハッピーラッキーデイ』から自然と手拍子が。まろやかで伸びやか、そして、わたなべだいすけ(vo&g)の厚みのある歌声が大地とリンクするかのように心地よく響き渡る。「今から焼きたてコールってのをやるから、みんなも前においでよ~」との呼び声の後は、人気曲『フランスパンのうた』。すでにほろ酔いのオーディエンスも、みんなでこぞってエクササイズのような振付を。これが楽しいのなんのって、キッズたちの嬉しそうな姿にも微笑ましくなる。そんな一体感を生む楽曲ももちろんながら、やわらかで暖かな『春風』、爽やかさも感じる『フォーエバー』など、切なさと温もりが共存した煌めくようなナンバーが心も軽くしていくよう。野外ライブの心地よさを存分に感じさせてくれるGOOD MUSICが、その場にいるだけで幸せな気分にさせてくれた。
3番手には、「ゲンキデスカ~! ROKKO SUN MUSICヨロシクオネガイシマス!」と、ノルウェーの国民的スーパースター、シンガー・ソング・ライターのソンドレ・ラルケがバンドを率いてステージに! ステージを縦横無尽に動くアグレッシヴなパフォーマンスで、瞬く間に視線を独り占めにしていく。“これぞ天才”と言わしめるメロディ・センスで作られる、普遍的かつ変則的なオリジナリティ溢れるナンバーに、ナイーヴで優しく、時にエモーショナルな歌声、躍動するリズム。そして、たとえ英語が分からなくても情景を思い描かせるような圧巻の表現力。一挙手一投足に釘付けになるとはまさにこのことか。ラストには「ダンス、モア?」とステージをおり、上半身裸でオーディエンスとダンス、ダンス! なんとも楽しそうに踊るそのさまと会場の雰囲気は、さながらディスコフロアのようだった。
「新曲からやりまーす!」と未発表の楽曲からスタートしたのは、今回で3年連続の出演となる、結成10周年の大阪発のインストバンド、Sawagi。繊細なサウンドが折り重なるにつれジワジワと体の芯をうずかせる。一粒一粒の音は立って聴こえてくるのに、描かれるサウンドスケープが流れるように心に届く。美しくも躍動感のあるアンサンブルに心がときめき、高揚感が全身を駆け巡る「これから踊れる曲をけっこうやるので、前に来て踊ってください」と『MOTER POOL IS NOT DEAT』を。キレイに盛り上げ、ぴたっとキメる。セッション性がありながらも緻密に構築されたステージングに、思い思いに体を動かしながら楽しそうに踊るオーディエンスたち。その様子にテンションの上がったメンバーの「bonobos前にする感じじゃないけど(笑)、めっちゃ盛り上げてかえるね」の一言で、コイチがキーボードをステージ上に直置きしてのアドリブ演奏も! ライブという醍醐味に満ちた貴重な瞬間に、会場中がタオルを回しジャンプして応える大盛り上がりのステージだった。
「こんなに定期的に出ているフェスはROKKO SUN MUSICぐらいかな(笑)。ありがたいね」(森本夏子(b))と、涼しくなってきた頃、bonobosが登場だ。繰り返されるフレーズ、煌めきを帯びた強靭かつ繊細なバンド・アンサンブル、芯がありながらも包容力を感じる蔡忠浩(vo&g)の滑らかな歌声にただただ酔いしれる。必ずやシンガロングと手拍子の波が押し寄せる『THANK YOU FOR THE MUSIC』の披露もあり、次第に会場中に多幸感が充満していくのが手にとるように分かる。彼らの楽曲は知らず知らずのうちに落ち着きと幸せを与えてくれる。都会的でありながらも媚びない、引き算を心得たエバーグリーンなサウンドに耳を傾けるだけで、とろっとした潤いを与えられているかのようだ。なんて心地よいんだろう。放たれるグルーヴの質感にも魅了され、沸々と感じる熱量に揺れ動かされる。光に包まれるアーヴァンな雰囲気の味わいのあるステージにひたすら心を奪われ続けた。
初日のトリは7回目の登場、もはやこのフェスには欠かせない存在のハンバートハンバート。マイクがポツンと2本置いてあるステージに、「おじゃましまーす」と登場した彼らは、まさかのMCからスタート。終わりが見えないおっとりした佐野遊穂(vo)のトークに、佐藤良成(vo&g)が「後にしよ」と切り出し1曲目の『横顔しか知らない』を(笑)。たおやかで慈愛に満ちた優しい歌声が、この日一日の疲れを癒すかのように体に沁み込んでゆく。あくまで2人、ハーモニカにギターかバイオリンの演奏のみとシンプルな構成ながら、決して物足りなく感じさせない、ふくよかなハーモニーとアコースティックなサウンド。懐かしくもあり新しくも感じる楽曲もさることながら、彼らの一番の魅力はやはり、心を素直にさせてくれるような声であり歌なのだろうとあらためて認識させられる。野外ならではのウグイスの鳴き声や風のささやきすら味方につけるかのような自然体のステージングは、何回観ても新鮮な感覚を呼び起こしてくれる。何度か足を運んできたROKKO SUN MUSICだったが、こんなに心が洗われほっこりしたステージで締めくくったのは初めてだったかもしれない。そして、それがこんなにも充実した気分に満ちたりるんだと気づけたステージは、惜しみない拍手とともに幕を閉じた。
昨日は持ちこたえた天気。2日目も似たような曇り空だ。そんな湿度の高い空気を「弾き語りやるけど、ゆるい感じじゃない爆音でやろうと思ってます!」と切り裂いたのがトップバッターのKim Wooyong。まずは「landscape」で口火を切り「tu tu tu」のスタッカートがきいたリズムで観客をリード。スモーキーなボーカルや口笛の音色で会場の雰囲気をよりアッパーにすると、かつて彼が率いたバンド・cutman-booche のナンバー「verse book」も飛び出す。「昨日笑ってた君が亡くなった日」などでは、ボイスパーカッションとループサンプラーで音を重ね、その世界をどこまでも広げる。これには後で登場するJOHNSONS MOTORCARのMARTINが「1人であんなに音出せるの、すごいよね!」と思わずステージで言う程。またラストのカバー「ナイトクルージング」(Fishmans)も、少し重めで熱を帯びた歌声がいつまでも絡みついて離れない感覚を味あわせてくれる秀逸なものだった。
ウォームアップは十分。涼しさが心地いい中、姿を現したのはWONK。彼らはヨーロッパ・ツアーも成功させ、SUMMER SONIC 2017にも出演が決まっている東京発エクスペリメンタル・ソウルバンドだ。当然注目度も高く、舞台前に人が集まり期待感にあふれる。そして始まったのは「Feelin’ You (Y.N.K)」。大人のフェス・ROKKO SUN MUSICに合うゆったりした揺れを起こすと、霧も濃くなりムード満点。メロウな歌声とピアノも堪らない。しかし「この霧を晴らす気持ちで盛り上げていきましょう!」(Kento)と煽ると、独特のリズムで「1914」でゾワッとさせ、ソウル・ジャズ風のアレンジで、ダリルホール&ジョンオーツの「I Can’t Go For That」もプレイ。サックス、フルート、打ち込み、オートチューンと豊かな音でクールにキメ続け、最後は「savior」でどこか穏やかな空気も残す。この自由度高く最初から最後まで地続きのアクトは、観客の記憶に強く残ったことだろう。
リハーサルからメンバーはノリノリ。つられて観客もワイワイすると「一旦ハケるので初めて見た感じで盛り上がってもらっていいですか?」(MARTIN)と、開始前からひと笑い。「俺ら座って見るバンドじゃないぞ~。降りて来てくださ~い」とMARTINが呼び掛けると、“騒ぎたいボタン”を押された大勢が前へ。軽快なドラム、キレッキレのバイオリンに子供たちも大喜びで、家族と手をつないでプチサークルモッシュ状態だ。さらに「GOD SHAVE THE QUEEN」の音頭のリズムには盆踊りの様相。「酒とあなたたちのダンスが、俺らの音楽には一番合うからね」(MARTIN)と、響き始めた「You are We are」では「ダンス!ダンス!ダンス!」のコールとハンズアップを起こし、ダメ押しの「Johnny is a Rovin' Blade」では「オイ!オイ!」の拳と高速バイオリンで昇天! 終了後「暴れ過ぎた~」と笑顔でビールを飲み干す観客もいる、ハッピーなお祭り騒ぎの時間となった。
天候まだ小康状態といった15:00頃。Keishi Tanaka は1曲目の「Wonderful Seasons」からエンジン全開だ。サックスがリードする多幸感あふれるナンバーは、パワフルな歌声ときらめくキーボードが重なり、いっきにテンションアップ。観客もクラップでこたえると、今度は本人がステージから降りて走り出し、子供と追いかけっこまで! さらに「Floatin' Groove」で彼らしい爽快感を拡大したかと思えば、次の「冬の青」では気分よく体を揺らしてくれる。そして「この後、(雨が)降りますからね(笑)。霧のフェスですからね。今からダメ押しの曲やります」と来れば「Foggy Mountain」! まさに「霧を待つ僕ら、星を呼ぶ僕ら」で、これぞROKKO SUN MUSIC!…といったところ。気分も最高潮になる。そして最後は弾むリズムの「Just A Side Of Love」。再び観客のもとに降り、今度は一緒にダンス。全員が一つなれるというライブの醍醐味を堪能できた全8曲だった。
雨が降り出すなか、ホリエアツシのソロプロジェクト・entがスタート。雨と共にこれまでの空気を変え、アコースティックギターと歌声で丹念に音楽を紡いでいく。最新作「ELEMENT」からは4曲を披露。胸を熱くするボーカルやアルペジオの響きに、物語を聞いているような気分になる。そして「昨日誕生日だったんです。今日もお祝いに友人が駆けつけてくれて…。本当に幸せです。恋しいと思えば会えるんじゃないかな」と語り、なんと久保田利伸 の「Missing」へ! このカバーには「光の午後も雨の六甲も」のアドリブも加わり、歓声が起こる盛り上がり。曲後は「…みたいな(笑)」の照れ隠しもあって、めったに見られないものを見たお得感が満載だ。しかし、本人もレアナンバーに動揺したのか、次の「Zoe」の歌詞を忘れるというハプニングも。もちろん仕切り直せば、そのエモーショナルなメロディを響かせ、しっかりと聴く者の心にentの存在を強く刻んでいった。
濃霧に包まれるも「雨に負けねえぜ!」(TGMX)の言葉どおり、アッパーに「pairyland」でお出まし! 会場もハンズアップに手拍子にとウェルカムの態勢だ。豪華7名によるバンドサウンドは、華やかで圧倒的で何より楽しい! その証拠に帰りかけていた人も音につられて戻って来る。「Putting on BGMs 」のサビでは左右に手を振るフェスらしい光景を生み、続く「hope」ではお約束のタオル回し。またFBYと書かれた旗を持ち「悪い子がいないかパトロールに行きますね」(TGMX)と最奥エリアまで走る大サービス。しかもKeishi Tanakaも加わり、マイクを持って歌うひと幕まで! 夢中になっているとあっという間にアンコールの時間。ここでさらにプレゼント!とばかりに、9/6発売のアルバムの曲を披露。メロディアスでドラマティックなナンバーに乗せられ、全員が完全燃焼で2日間を締めくくった。照明と霧に浮かび上がるTGMXのシルエットは、しばらく忘れられそうにない!
沸騰した空気が残る会場に「みなさん、1日楽しみましたか?」とラジオでよく聞くラブリーな声を轟かせ、気持ちよくクールダウンさせてくれたのが土井コマキ。まずは六甲山でこれが聴きたいと、COMEBACK MY DAUGHTERSの「Bored Rigid」をセレクト。さらに奇妙礼太郎トラベルスイング楽団の「機嫌なおしておくれよ」やandymoriの「愛してやまない音楽を」を続け、程よいほっこり感と消えることのない音楽愛でオーディエンスを優しく送り出す。霧が立ち込め下がる気温と反してポカポカとした気持ちで家路につく人たちはもれなく笑顔。きっと彼らは来年、ROKKO SUN MUSICに戻って来ることだろう。
Text by 服田昌子
Photo by 渡邉一生